トガニ 幼き瞳の告発 ネタバレ 感想
あらすじ
韓国のある聴覚障害者学校で実際に起こった性的虐待事件を映画化し、韓国社会に波紋を起こしたサスペンスドラマ。郊外の学校に赴任した美術教師のイノは、寮の指導教員が女子生徒に体罰を加えている現場を目撃する。やがて、その女子生徒が校長を含む複数の教員から性的虐待を受けていることを知ったイノは、その事実を告発し、子どもたちとともに法廷に立つ決意を固めるが……。韓国では本作の公開で事件が広く知れわたり、当該の学校が閉鎖されるなど社会現象を巻き起こした。主演は人気ドラマ「コーヒープリンス1号店」のコン・ユ。(映画.comより)
予告
90点
脳みそが沸騰しました
「ファニー・ゲーム」や「マーターズ」系の胸糞悪い系って僕はわりと観れる方んですよ。
そりゃみた後は多少引きずるけどしばらくすればケロッと「さて次は何の映画観るか~」なんて思えちゃうんです(嫌なことはすぐ忘れてくれる頭に感謝)
でもねえ・・・実話系は無理なんですよ。。。
しかもこういった虐待系や障害とかおじいちゃんや幼い女子供がひどい目にあうのは本当に苦手。
ちなみにのりたまもこういうのは苦手でボロッボロ泣きながら怒ってました。
ということで「トガニ 幼き瞳の告発」です。
韓国で大反響を呼んだ実話の映画です。
その反響は本当に大きなもので・・・
この映画が公開されて事件の真相が世間に知れ渡ったことで「トガニ法」という法律が制定されたり裁判のやり直しなどが行われたほどです。
またこの映画を撮った監督もかなりプレッシャーがあったようです。
なぜならこの事件が起きたのは映画公開のたった数年前です。
だからもし映画が駄作だったなら「ただインパクのある事件をネタにしただけ」という烙印を押されかねないのだからそのプレッシャーは計り知れないでしょう。
ザックリとストーリーを紹介
・障害者の学校に先生としてイノ(コン・ユ)がやってくる
・生徒の怯えた様子に何かを感じるイノ
・実はこの学校の校長や教師は性的虐待や暴力を日常的にふるっていた
・人権センターにかけこんだりマスコミを使って虐待の全容を暴こうとするイノ
・裁判になり校長の隠しテープなどを手に入れたこともあってイノ達が有利に運んだかにみえたが・・・
・だが学校側も巨大なコネと豊富な金がありそれで事件の隠蔽にかかろうとしていた
・結局罪には問われたものの恐ろしく軽すぎる罪に絶望するミンス(虐待されていた子供の一人)
・パク(加担していた教師の一人)を道連れに電車に轢かれてしまうミンス
これほどの悪意があるのか
大人ってのは子供から見れば「絶対に勝てない巨大な怪物」です。
そんな怪物がドス黒い欲望と悪意を向けてきた時に子供はどうなるのか。
経験しなければ絶対に計り知れない絶望と一生消えない心の傷をおうに決まってますよね。
この映画はそこら辺の描写は本気で容赦がないです。
一応補足しておくと虐待シーンは子役にも最大限の配慮をしており間違っても役に入り込む事のないようにしてあるそうです。
例えば・・・
・子役には具体的な説明はせず「ただ暴れるだけでしい」といった演技をさせる
・虐待する側とされる側のシーンを別々にとる
・親御さんを連れてくる
などといった具合ですね。
とはいえ映画としてみるとハンパない破壊力なので目を覆いたくなること必死です。
上の画像のシーンなんかは「このはげおやじをマーターズの刑に処してやりたい」と思いましたね。
あ、パクとコンジャエ(校長の愛人)は「セルビアン・フィルムに出演の刑」でお願いします。
他にも賄賂をもらっていた裁判官や悪事に加担したやつらはまとめてセノバイト達にお世話してもらおう。
ってこんな妄想を本気でするほど心の底から怒りが湧いてきましたよ。
まあ、これだけ画面越しに怒りを覚えられるのも演じている役者の演技が上手いってことなんですけどね。
子ども達に人間性を救われたイノ
主人公のイノはヒーローでもなければ正義に燃える熱血漢でもありません。
コネを使い親の助けを借りて裏金までつくってこの学校に入ってきてます。
どちらかと言えば社会的には弱者に分類されるでしょう。
しかも物語の途中では親に言われるがままにイノまでもが校長にゴマをする直前までいってましたからね。
でも純粋無垢な子供たちと触れている内にその美しさ尊さに大きく影響されたのでしょう。
金と権力と欲望渦巻く汚らしい大人の世界に真っ向から立ち向かえたのは間違いなく子供たちのおかげだと思います。
だからもし子供がいなければ流されるままの人間になってた可能性もあるでしょうね。
ちなみに植木鉢をパクの頭にぶちますシーンは心のそこから「よくやった」と賛辞を送りたくなりました。
視聴者としてはフラストレーションを爆発させられる数少ないシーンですからね。
禍々しい現実
このお話のラストは金と権力に負けてしまいます。
金も権力も上手く扱えれば人を幸福に出来る強大な力だけど手にすべき人間じゃないものが手にした時は人に災いをもたらす災厄になってしまう。
そんなものに純粋で無垢な子供たちが負けるというのは何とも禍々しい現実をみせられている気がしました。
「正義も救いも力を持たなければ手に入れられない」
そう突きつけられているような気がします。
でもその力を手にするチャンスすら与えられない子供たちはどうすれば・・・?
その答えがラストのミンスの行動なんだと思います。
あれが弱者の最後の足掻きだったのだと思うと何とも悲しいものです。
映画の力
この映画が国を動かしたのにびっくりですよ。
日本の感覚で言えば多少社会に影響を及ぼそうとまずありえないですからね。
まあ「映画というエンタメに動かされてしまう国ってどうなの?」ってんのもあるんでしょうけど・・・
それでも映画がキッカケで悪事を暴いたのは純粋に良いことだと言えます。
映像は撮り方次第で全然違う印象を与えることができます。
極端な話この映画で学校サイドをよくみせようと思えばできたと思いますよ。
あとはゲスい話を言えば子役がすっげーブサイクだったら心を動かされなかった人もいるかもしれない。
逆に可愛い子ばかり集めても「可愛い子ばかり集めて同情心集めようとしてんじゃねぇよ」というパッシングもありえました。
そんなあちらを立てればこちらが立たずという可能性のある中この映画をエンタメとして撮りきれたのは凄いと思いますね。
まとめ
万人には間違いなく勧められないけど絶対観て欲しい、そんな映画でした。
ただエンタメとしても楽しめる・・・って言うと語弊があるけど人間ドラマとしてもよく出来ているんですよね。
子役の演技も凄いし子供たちの心情はもちろんのことイノの立場的なものとかも色々考えさせられましたよ。
だってイノだって自分に養わなきゃいけない子供がいて大金はたいてまで得た職を子供とはいえ赤の他人の為に投げ打つわけですから・・・
自分にそれが出来たかって自問自答しても答え出せないですね。
トガニと立場が逆転した映画。僕の感想はこんな感じです→偽りなき者 ネタバレ 感想
「トガニ」を観て真っ先に連想した映画、内容はリベンジ系です。
主人公の名前忘れたけどジェラルド・バトラーに汚職してた連中を八つ裂きにしてほしい。
余裕のある時に読んでみようとは思う。
何をやりたくてこの映画とったのかわからない。
これこそ「インパクトある実話をネタにしただけ」の映画の典型である。
パラドクスの解説を拝見させて頂きました。
私は2度見てもなんのことやらさっぱりでしたので、感心致しました。
このトガニですが、私も以前友人達と一本ずつ持ち寄って鑑賞会なんかした時に選んだ思い出のある映画です。
この映画をすごく評価していらっしゃるようなので一つオススメを紹介させて下さい。
007カジノロワイヤルで敵役を演じたマッツ・ミケルセン主演の「偽りなき者」
こちらは実話ではないものの実際に起きたかのようなリアルなストーリーと人間模様に只々唖然とさせられました。
韓国の社会派映画は殺人の追憶を筆頭に熱のある映画が多いですがこれも負け劣らぬ説得力を持っていたと思います。既にご視聴済みなら聞き流していただいて、もし未見であれば是非一度ネット検索であらすじでも読んで頂ければと思います。
では、長文失礼致しました。
パラドクスの記事は滅茶苦茶長いのに読んでいただいてありがとうござます。
正直自信のない所も多いのですが参考になったのなら幸いです。
「偽りなき者」の予告を早速観てみました。
トガニとは正反対の展開になってて面白そうですね~。
今借りてる映画を返すときに早速借りてみようと思います(^^)
本当韓国の映画って人の心をえぐるのが上手いし勢いありますよね。
それでは映画を紹介してくださってありがとうございました。
観たら感想を記事にして書いてみます!