[人肉を食べたら]アシュラ(アニメ) ネタバレ 感想[人でなくなるのか]

アシュラ [DVD]

あらすじ

洪水やかんばつが相次ぎ、およそ10年もの長い期間続いた応仁の乱が勃発(ぼっぱつ)した1400年代の半ば。アシュラは荒野と化した京都でケダモノのように育ち、生き抜いていく。そんな中、優しい少女・若狭や法師の教えにより、言葉や笑うことを覚えたアシュラ。しかし天災が訪れ、人々は貧困によって追い詰められていき……。(シネマトゥディより)

予告

90点

生きることは痛みに耐えること

元は漫画なのですが、映画ではだいぶ原作と展開が違います。

個人的には映画の方がシャープで洗練された映像作品になってて好きなんですけど、悪く言えば原作の毒っ気が多少抜けてるんですよね。

原作は汚いえず・・・もとい昔ながらの絵面だけど、人という生き物の本質をとてもリアルに描いています。

でも映画では人の本質に触れつつも、あくまで娯楽作品であることを忘れないような編集になってるんですよね。

漫画、アニメとどちらも甲乙つけ難い作品なので是非両作品を鑑賞するのをオススメします。

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ザックリとストーリー紹介

・飢饉によって我が子を焼き殺して食おうとした女がいた。

・しかし焼かれた子はそれでも生き残り、ただ一人飢饉を生き抜くことになる。

・その子は目に映る生き物全てが食い物に過ぎなかったが、ある日坊さんと出会い、坊さんにアシュラと名付けられる。

・坊さんの元を離れたアシュラは、地主の子供を殺めてしまい、地主に谷底へと突き落とされる。

・そこでアシュラは若狭に助けられて言葉を覚える。

・平穏な日々が続いていたアシュラだったが、若狭の恋人七郎に嫉妬して、七郎に怪我をさせてしまう。

・若狭に「ひとでなし」と呼ばれてしまったアシュラは一人駆け出し、生まれてきたことに絶望する。

・途方に暮れたアシュラは坊さんとまた出会い、坊さんは「絶望がお前を人に変えた」と言うが「オレは獣だ」と譲らないアシュラ。

・そして再度訪れる飢饉に飢え、衰えていく若狭と七郎。

・そんな中アシュラが生きていることを知った地主は村人たちを集めてアシュラ狩りを行う。

・今にも餓死してしまいそうな若狭に「生肉」を持ってきたアシュラは若狭に食えと言うが若狭は「人肉を食ったら終わり」だと拒否。

・どうしても食べてくれない若狭に深い悲しみを覚えるアシュラに地主たちが襲い来る。

・地主たちに追い詰められ、橋に火をかけられて谷底へと姿を消すアシュラ。

・数日たって七郎は若狭の遺体を運んでいた、その横をすれ違ったアシュラの目には涙が。。。

・更に数年後アシュラは坊さんになりEND

原作との相違

だいぶ原作とは違うのでまずは原作との違いを書いておきますね(覚えてる分だけ)

・若狭を好きなボンボン(名前忘れた)のエピソード全カット。

・京都へと向かうエピソード全カット。

・アシュラの父ちゃんと母ちゃんのエピソード全カット。

細かいけどわりと重要な相違

・原作ではアシュラは坊さんにはならない。

・原作では若狭はアシュラの持ってきた肉を食べてしまう。

良くも悪くも美化された登場人物たち

(CGなので好みが分かれそうだが僕は大好きです)

原作は良くも悪くもだいぶ汚いです(褒め言葉)

人の汚さだとか愚かさみたいを上手く描いていて人の根源にあるものは獣だってのを突きつけた来るんですよね。

例えば原作の若狭は彦次郎ってボンボンに空腹の限界になって生きるために七郎を捨てて身売りするし、アシュラの持ってきた肉にもガッツリむしゃぶりつきます。

なのにアニメでは七郎に「今度っていつよ」って言ってる所くらいしか汚い部分がないし、アシュラとのやりとりでは聖女みたくなってますからね。

まあ、こういった「美化」はいい部分もあるし原作の魅力を損なう部分でもあったと思います。

あとすっっっっごくどうでもいいんですけど、七郎がスト4のりゅうソックリなんですよね。

七郎↓

スト4のりゅう↓

似てないですかね?

野沢雅子の力あってこそのアシュラ

(不気味なのに可愛いんです、坊さんとの戦闘シーンはカッコイイしね)

野沢雅子と言えば『ドラゴンボール』の悟空の声優で有名なわけだけども、日本一・・・いや世界一有名な声優かもしれませんよね。

だから観始めた時は「悟空のキャラクター像がチラついちゃうんじゃないかな~」なんて思ってたけど、見終わった後は悟空よりも野沢雅子=アシュラのイメージのほうが強くなってましたよ。

特に印象的なのは猿の親子への八つ当たりと必死に若狭を説得するアシュラのシーン、「うまれてこなきゃよかったぎゃ」と野沢雅子さんの耳をつんざく高温ボイスが、胸(ハート)をビシバシ叩いてきますからね。

人肉を食うことの意味

(母ちゃんのエピソードもできればいれてほしかったなあ)

人だって話せることを抜かせばただの哺乳類なので、別に犬や猫・・・食用で言えば牛や鶏との違いはありません。

宗教や倫理観だって人が勝手に作った概念なので、理屈では人を食べるのって別に特別なことではないんですよね。

劇中に出てくる坊さんだって「もう人を殺めるな、食うな」とは言っていますが、人を食うことの是非に関しては口に出していませんしね。

ただそれでも坊さんが人を殺すな、食べるなとアシュラに問い続けたのは、人に生まれた以上人として生きようとするのが人の性だってことです。

人に生まれのならば人の理に従うしか生きる道はありません。

無理して獣の生き方を真似た所で自らの心を殺してしまうことになるだけで、人は心と体のどちらも守らなければ人としては生きていけないんですよね。

 

しかし何とも身勝手な生き物ですよね人って。

だって自分たち(人類とか愛玩動物)の仲間は死んだりするとと苦しむくせに、ゴキブリといった『敵』は生きていようが全力で殺しにかかるし、動物を「食用」と勝手に名付けては繁殖させてはさばいて食ってるわけですからね。

人は業が深い生き物とはよく言ったもんだな~って思いますな。

アシュラで満足できなかった人は『生きてこそ』も観てみよう

生きてこそ (字幕版)

アニメアシュラは正直かなりエンタメよりの作品です。

メッセージ性もあるけれどもそれよりも視聴者へのサービス精神に終止した作品と言えるでしょう。

もしそんなリアリティの欠片のないエンタメは求めとらん!と思うのなら是非『生きてこそ』って映画を観て欲しいと思います。

1972年に実際に起きた飛行機墜落事故で、人肉をテーマにした実話映画です。

実話故か進みは遅く、エンタメ要素は殆どないのでドキュメンタリーに近いですね。

映画の始まりと終わりには生き残った方が映像で当時を振り返っています。

その時のが「食べたか食べてないかなんてその場にならなきゃ誰にもわからないよ」という言葉がとても印象的でしたね。

まとめ

70分チョイの短い映画なのでさっくり見れるし、映像のクオリティも高く、何より野沢雅子の演技には心をうたれました。

ちなみによくグロいグロい言われますが、直接的な表現はかなり避けているので全然グロいことはないです。

生きること食うことを今一度考えさせられるいい映画なので是非観てみて下さい。

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