[小さな]籠の中の乙女 ネタバレ 感想[世界]
あらすじ
2009年・第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞し、10年・第83回米アカデミー賞では、ギリシャ映画として史上5本目となる外国映画賞にノミネートされたサスペンスドラマ。妄執にとりつかれた両親と純真無垢な子どもたちを主人公に、極限の人間心理を描く。ギリシャ郊外に暮らすある裕福な一家は、外の汚らわしい世界から守るためと、子どもたちを家の中から一歩も出さずに育ててきた。厳格で奇妙なルールの下、子どもたちは何も知らずに成長していくが、ある日、年頃の長男のために父親が外の世界からクリスティーヌという女性を連れてきたことから、家庭の中に思わぬ波紋が広がっていく。(映画.comより)
予告
60点
歪んだエデンの園と禁断の実
前々から観ようと思っててコメントの方でもオススメよ!とあったのでちょい前に観た作品です。
結論から言えば期待したものではないものの「うむう、中々破壊力あるわ・・・」って映画でした。
ただ鬱系の映画ではないので、心に深い傷を追ったりはしませんでしたけどね。
でも間違いなく人を選びまくる映画なのは確かで、人によっては「時間返せやコラ」って感じちゃうかもしれません(のりたまは合わなかったぽい)
ザックリとストーリー紹介
・とある町の郊外で息子一人、娘二人、お母さん、お父さんの5人家族がいた。
・お父さんは世間の穢れから子どもたちを守るために様々な嘘で外に出さないようにしていた。
・ある日お父さんは成人した息子のために、クリスティーナという女性に❝年頃の男の子の相手❞をお金を払ってさせる。
・だがクリスティーナは調子に乗って長女にもちょっかいをだすようになる。
・様々な新たな体験や知識を獲得していった長女は、悪知恵を働かせてクリスティーナから映画のDVDを奪い取る。
・そこで自分の知らない世界を知ってしまった長女は外の世界へと興味を持つようになる。
・だがクリスティーナのやったことがお父さんにバレてしまい、クリスティーナは解雇(物理)される。
・外への興味でいっぱいの長女は、自ら犬歯をへし折りお父さんの車のトランクへと忍び込む。
・そんな事はつゆ知らず、お父さんは車を会社に走らせトランクへとカメラがズームしていきEND。
気持ち悪さマキシマムトマト(褒め言葉)な映画
(言葉の正しい意味を意図的に隠す感じが気持ち悪いのです)
ちなみにマキシマムトマトってのは星のカービィの全回復アイテムです。
星のカービィといえば小さい頃はスーファミのデラックスを友達と毎日のようにやったもんですよ(居合斬りとか地球割り)
特にレースのタイムアタックはソロでもべらぼうにやりこみましたね~。
なんで唐突にこんな事言い始めたかというと最近ローソンでカービィまんが発売されたんですよね。
僕も早速食べてみたけど普通に美味しいトマトまんでした。
まあ、そんだけで特に深い意味はないです。。。はい、ということで映画のお話の方にいきますね(どういうことだ)
さて、この映画自体はとてもシンプルな内容でして、要は「子供を自分たちの思い通りに育てたい!」という想いが歪みに歪みまくってしまった親ですね。
主に親がやったことは外との世界から隔離とアンモラルな言葉になりそうなものは別の意味を植え付けるという2つのことでした。
だけどこの2つによって息子と娘二人は人間なのに人間らしくない人間になってしまったのです。
例えばクリスティーナと息子の性行為なんかは凄い動物的なんですよ。
この動物的ってのも荒らしいとかって意味ではなく、むしろ飼育された動物みたいな感じでして。。。
本来人間って生き物は知性を備えてるじゃないですか。
だから性行為一つとっても知性があるからこそ、逆に本能をむき出しにした時のエモーショナルな感じが美しく官能的に見えるもんなんです。
知性のある生き物が知性を失くすくらい、燃え上がってるのに背徳感と共にカタルシスがあるわけですからね。
なのにこの映画の淡々とした描写はもー人間らしくないのなんのって、それがまた何とも言えない気持ち悪さがるんです。
何というか生きていると言うよりも生かされているって感じが気持ち悪いというかね。
全編通してその気持ち悪い雰囲気はとても良かったな~と思えた・・・んだけど残念な所もあるんですよね~。
変にコメディに寄せてるのが残念
(自分で血糊ぺたぺたするお父さんとか笑って良いのか困る)
わざとなのか本気なのかはわかりませんが、ところどころコメディっぽいんですよね。
いや、コメディは好きだしブラックコメディも好きですよ、でもこの映画には合わないかな~っと。
もっと重く暗い雰囲気とか親が何故こんな事を子供に強いるようになったのかの経緯(一応それとな~~~くそうなった経緯は劇中である)をもっと綿密に描いてほしかったかな~って思っちゃいました。
神(お父さん)に反逆する純粋な犬(娘)
(長女からすれば救世主であったクリスティーナ、もっと出番が欲しかったな~)
ってこんな感じの見出しにするとスッゴイかっこいい映画になりません?
でも実際聖書通りに解釈すると・・・サタンの誘惑(クリスティーナ)に負けたイヴ(長女)は禁断の果実(DVDとか)に手を出して神の元(親父)を離れるってとれますよね。
聖書では人類の不幸の始まりである悲しいお話だが、この映画では長女の新たな人生の旅立ちになった、というのに皮肉めいた何かを感じますね。
さて聖書の妄想話しはおいとくにしても、親ってのは例外なく子供にとっては例外なく神様です。
だって子供を作るのも親だし、導くのも親ですからね。
だけど親が正しいとは限らない=神様が正しいとは限らない・・・って結論になるわけですよ。
そう考えるとなんだか神様信仰の強い欧米とかに対するアンチテーゼみたいなもんを感じますよね。
だからこの映画は「神様(親)の歪んだ悪の魔の手から逃げ出した犬(娘)」というハッピーエンドともとれますな。
もちろん、トランクから抜け出すことができなかったのなら娘はまた囚われの犬へと逆戻りでしょうけど・・・。
ただ犬歯をへし折るくらいの気概のある子ですし、何より人間に備わっている❝好奇心❞は神様になんかにゃ止められないことは実証済みですからね(禁断の果実のお話)
まとめ
個人的にはよりダークでディープな作品に仕上げてほしかったと思う映画でした。
設定はいいし、中々エグい画も多かったのにちょいちょい「笑うところなのかな?」って思う所があるせいで映画に入っていけなかったんですよね。
まあ、観る前に期待値を上げすぎたり、求めているものとは違ったってのが一番楽しみきれなかった原因ですね。
逆にこの映画のブラックコメディな感じが受ける人はとても楽しめたんじゃないでしょうか。
「閉鎖された空間で育った」というキーワードで思い出したのがこの映画。
文句なしの名作なので未見なら観るべし。
これも確か閉鎖系だったと思います。
内容は殆ど覚えてないけれども、当時ホラー映画を観るつもりで観たので???ってなったのはよく覚えてます。
こんばんは。ゆでたまさんもご覧になったんですね!この監督は
「ちょっとおかしいのかな?」くらいの不条理コメディですよね。ダークサイドに行きそうでいかないのが苛立ちがあるのかも…。『ロブスター』もそういう映画でしたし…。これがもっとシリアスな話だったらゆでたまさんのおっしゃるように映画のトーンとしてはまとまったかもしれないですが、逆に倫理観とか厳しく問い詰めなくてはならなくなって、重苦しくなったでしょうね。結構酷いことやってますから…。私は花をゾンビと呼んだり何かシュールで笑えるのと、父親がビデオで激しく殴ったり暴力的なところが混ざっている塩梅が逆に良かったですが、そこが温くて嫌な人の気持ちも分かります。テンポも遅いですからね。まぁ考えさせられる思考実験の映画と思えば観られますね。
私は純粋培養の教育の恐ろしさを皮肉った映画だと思いました。
程度の差はあれ、子供にバイオレンスやポルノを見せたくないと
ギャーギャー言っている親御さんがいますからね。そういうのを
覚えながら社会に適応していくわけで…。あの長女の奇妙なダンスは映画「フラッシュダンス」だそうです。自由への渇望は洗脳しても消しきれないんでしょうね。長女に幸あれ。
雪さん、こんばんは!
仰られる通り、ダークサイドに行きそうで行かないのにもやもや感がありましたね~。
『ロブスター』の監督さんでしたか!『ロブスター』は観たいな~と思って結局見てない映画なんですよ。
そうですね~、コメディって観る人のツボによって印象が随分変わっちゃいますよね。
う~む、相性がとても大事な監督さんというわけすな。
あ、あのビデオでの殴打シーンは僕も凄く好きです、あのカメラアングルも相まって何とも言えないシュールな雰囲気が良いですね!
なるほど、確かにそういう見方もできますね。
見せなくたっていずれは自力で辿り着きますからね、子供の好奇心は侮れません。
それに極端に制限して大人になってから拗らせる可能性を考えると抑圧し過ぎは良くないだろうし。。。
『フラッシュダンス』ってこの踊りだったのか!何となく見覚えるがあるな~と思いきや。
こんばんは中村です。
皮を剥いた先には非常にシンプルな芯が残るといったような言葉はかの鬼才デイビッド・リンチがどこかで言っていた言葉ですが、彼の映画は正しくそれと言えるんですがこの芯の部分がなんなのか分からない、分からないからこその不気味さ不快さを持っているのは何と言ってもスペイン映画だと思いますというのを付け加えて後の感想は既にお二人がお話されてしまっているので特に言うことも無かったんですが、セルビアの紛争、そして暴力でもって国を守るその行く末をスプラッター映画として表現した「セルビアン・フィルム」やハンガリーの移民問題、人種差別等を犬に置き換え、250匹の犬が街を駆け回る「ホワイト・ゴッド」など、敢えてそのままの表現を避けて別の話として置き換えるやり方は最近珍しくないですが、この映画もどちらかと言うとそちらの部類に入るのかなと思います。
この映画をリアルに観せたいならハネケの「ホワイト・リボン」の様な話にすればいいと思いますが、そうしなかったのはその映画の本質は観客自身に見出してもらいたいという事なのでしょうか。けどこういうやり方は割と好きか嫌いかの面も大きいため中々成功しなかったりするのでとても難しそうだなと思います。
因みに、大人がああしなさいこうしなさいと言うのを一周回って素直に受け取ってしまった、少年ダークサイド版みたいな「悪童日記」というのがありますが、私は割と好きな映画です。話自体は全く違うんですけどもってるテーマの方向は似てるのかなぁと思いました。
中村さん、こんばんは!
ほへ~、いつもながら中村さんの映画の造詣の深さには驚かされます。
『セルビアン・フィルム』をただのエログロ悪趣味だけど無駄にサスペンスフルで面白いだけの映画としか思ってなかった自分が恥ずかしいです。
でも複雑な人種問題や差別の問題やジェンダーの問題などを別に「何か」に置き換えて描く手法は確かに最近はちょいちょい見かけますね。
う~む、確かに観客に問う形の映画って成功は難しいかもしれません。
基本映画って受動的な楽しみ方をする人が大半ですからね、自分から楽しさを見つけに行ける人じゃないとそういった映画は厳しい評価になるんでしょう。
僕も能動的に映画を楽しんでいるつもりではあるのですが、まだまだ未熟なんだなって思います(世界の常識をもっと勉強すべきですな!)
『悪童日記』の予告観ました。
予告だけでも強烈な圧を感じましたよ~。
扱っている題材もディープですけど、子役の鋭い目つきが印象的でしたね。
かなり気になった作品なので今度観てみたいと思います!
中村の訂正です。
一番下の「悪童日記」の内容は別の奴で、実際は自分を守るためにどんどん冷酷な子供になっていく話です。色々ごっちゃになってしまいました。
テーマは全然似てなかったのですみませんが原作含め凄く良い作品だと思います。