[少女の願いが招いた]マジカルガール ネタバレ 感想[災厄]

マジカル・ガール [Blu-ray]

あらすじ

日本の魔法少女アニメにあこがれる少女とその家族がたどる、思いがけない運命を描いたスペイン映画。独創的なストーリーや全編を貫くブラックユーモアが話題を集め、スペインのサン・セバスチャン国際映画祭でグランプリと観客賞を受賞するなど、高い評価を獲得した。監督はこれが長編映画デビュー作となる新鋭カルロス・ベルムト。白血病で余命わずかな少女アリシアは、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。ユキコのコスチュームを着て踊りたいというアリシアの夢をかなえるため、失業中の父ルイスは高額なコスチュームを手に入れようと決意する。しかし、そんなルイスの行動が、心に闇を抱えた女性バルバラやワケありな元教師ダミアンらを巻き込み、事態は思わぬ方向へと転じていく。(映画.comより)

予告

 

75点

魔法も、奇跡も、ないんだよ。

魔法少女というジャンルは不思議な魔力があるのか根強いファンが非常に多いです。

僕が知っているのは「魔法少女まどか☆マギカ」シリーズくらいだけど・・・他にも「魔法少女リリカルなのは」「ストライクウィッチーズ」(魔法少女とよんでいいかわからないけど)等など、マイナーなものを含めればキリがありません。

僕の観た「魔法少女まどか☆マギカ」はホラー要素やシリアス要素が強くて印象深かったです。

魔法少女という可愛らしさとシリアスやグロとのギャップが斬新でした。

あ、グロといえば「魔法少女・オブ・ジ・エンド」なんてゾンビものの漫画が結構面白かったです。

ゾンビしてるのは最初の方だけなんですけどね。

 

とま~ちょいとマニアックな前置きになったけど、この「マジカルガール」はどうやら日本の魔法少女モノを愛する監督が撮った映画らしい。

外国人の描く魔法少女とはまた斬新だな~と思い借りて観たわけですが・・・

うーん、どこらへんに魔法少女要素が?と言わざるおえません。

どちらかと言えば魔法少女を皮肉った感じかん?と思う内容でした。

でも流れるような不幸の連鎖や映像の美し方や細かいところの伏線は見事の一言です。

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ザックリとストーリー紹介

・白血病で余命幾ばくもないアリシアの趣味は魔法少女の世界に没頭すること

・そんなアリシアを娘に持つルイスはアリシアの大好きな魔法少女のドレスを買ってあげたいが失業中でお金がない

・宝石泥棒をやろうとするルイスだが、突如上からゲロをぶちまけられる

・そのゲロは精神病持ちのバルバラが夫に出て行かれたショックでOD(オーバードース)したものだった

・バルバラはルイスを家に上げて一夜限りの過ちを犯す

・だが出ていったと思われた夫は戻って来たことでルイスに一夜限りの過ちをネタに脅迫される

・バルバラは昔働いていたSMクラブで一度っきりの復帰をして金を用意する

・ルイスはその金でドレスを購入するがアリシアは浮かない顔をしていた

・何故ならドレスはステッキとセットで初めて「魔法少女に変身できる」ものだったのだ

・ルイスは再度バルバラを脅迫し、バルバラも渋々承諾

・しかし前回の倍以上の金額を稼がないといけながためにバルバラは禁断の「トカゲ部屋」と呼ばれる高額報酬の部屋に入る

・顔をズタボロにして心身ともにやられたバルバラはルイスへの復讐を決意、昔のよしみであるダミアンに嘘をついてルイスにけしかける

・ダミアンはルイスとアリシアを始末し、バルバラの嘘にも気づく

・バルバラの病室へと戻りダミアンは浮気の証拠テープをマジックで消してみせEND

魔法少女を皮肉った物語

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(たった一言だけど子を持つ親を泣かせるには十分な破壊力、その直前が女の子らしい願いなだけに・・・)

アリシアにとっての魔法は純粋無垢な願い、バルバラにとっての魔法はドス黒い復讐心の願い。

ゲームの世界では純粋無垢な白魔法的なものには代償が必要なくMPを消費するだけで願いが叶うことが多いですよね。

でも復讐心などの黒い感情から生まれた願いには大抵手痛い代償がつきまとうもの。

しかしこの映画の魔法には白も黒もなく、等しく願いには代償が必要にある上にその代償が等価ですらないんですよね。

アリシアの場合は彼女の願いは魔法少女になるというもの。

だけどその願いはルイスを間違った方向へと突き動かしてしまいました。

そしてそれは連鎖反応を起こし、バルバラを不幸にしダミアンを不幸にしました。

でも本人は全く意図してないものなんですよね、なのにその代償を背負わされるんです、しかも死という形で。

13歳で余命1年しかない少女がですよ?

小さな願いにしてはあまりにも背負うべき代償が大きすぎるんじゃないでしょうか。

それに引き換えバルバラの嘘と怒りにまみれた黒い願いは欲望のままに叶えられるんです。

その代償もほとんどなし。

強いて言えばダミアンがまた刑務所入りすることくらいですかね。

 

この不順理が漫画やアニメなどの魔法少女を痛烈に皮肉ってるなと感じたところです。

純粋だろうが無垢だろうが「お前願ったよな?求めたよな?」という声が聞こえてきそうな感じ。

生きたいという願いも魔法少女のコスプレをしたいというささやかな願いすらも「誰かの」さじ加減ひとつで多大なる代償を背負わせられる。

実にリアルで無慈悲、これ以上ないほどの現実。

うーん、現実においての魔法を叶える代償はとてつもなく大きいんだぞ~ってことなんですかね。

伏線のはりかたや演出がニクイ

まずこの映画の面白い所は地味な伏線の張り方が素晴らしいんです。

・ルイスが携帯をよく忘れる→結果的にダミアンがルイスの家にいくことになりアリシアが死ぬ原因になる

・ルイスが宝石屋の前でダミアンのパズルを拾う→ダミアンのパズルの最後の一ピースがないせいで作品が完成しない

・冒頭と終わりがマジックで終わる→最初はバルバルラが最後はダミアンがマジックを披露

他にも印象的な演出が多く、マジカルガールの世界観にグイグイ引き込まれるんですよね。

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お世話になった刑務所の先生にもらった完成仕掛けのパズルを崩す→刑務所で積み重ねてきた人生を自ら破壊。

ダミアンの十年がバルバラの一言で壊滅しちゃったと思うとなんだか切ない。

他にも冒頭のやりとりと終わり方がおんなじなのも様々な解釈ができて面白い。

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バルバラにやられたマジックの嫌がらせを時代を経て・・・

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ダミアンがやり返す、これには視聴者も思わずニヤリ。

アリシアが望んだものは何だったのだろう

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(きっとこの格好は真っ先にルイスに見せたかったのだろう)

アリシアは自分の余命を把握してるわけじゃないですか。

だからタバコを吸ってみたり、酒を飲んでみたりと、大人にならないと楽しめないものを生きている内に経験しておこうと思ったんでわけです。

でもそれで満足したか?ってそんなわきゃないんですよね。

13歳という年はまだまだやりたいことが山ほどあるわけで・・・そんな彼女が「なんでも願いが叶う魔法少女」に憧れるのは必然だったのかなと思います。

生きたいという願いが魔法少女という趣味に走らせたわけですね。

でもその趣味がまさか自分の余命を縮めるとは夢にも思わなかったんだろうけど・・・

 

そんな彼女のもっとも願ったものって何でしょうね。

魔法少女になること?父親との時間?作中では明言されません。

ただ言葉の端々から何となく推測はできます。

ありきたりかもしれないけどやはり彼女は父親との時間を望んでいたんでしょう。

それは「病院が好きだ」というセリフからもわかります。

病院が好きなのは他の子よりも父親との時間を得られるわけですからね。

そんなアリアシアの本当の願いは虚しくもルイスには届かなかったわけだけど・・・

ダミアンとバルバラの関係はどんなものだったのか?

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(生意気な小娘はすっかりグレてメンタルのイカれた女性に・・・)

この映画の最大の謎がバルバラとダミアンの関係。

バルバラはダミアンを守護天使だといい、ダミアンはバルバラとの再会を拒んでいました。

作中で2人の関係性や2人の過去はほとんど明かされないのでこれまた推測するしかありません。

とりあえず、バルバラの詳細を時系列順にまとめてみましょう。

・幼少期は先生に反抗する悪い娘だった

・教師時代とのダミアンとの間で何かがありダミアンは10年間服役することに

・バルバラはSM業界で働いていてスターだった

・元々持ってるのかSM業界でなったのかメンタルヘルス持ちになる

・現在の精神科医の夫と出会う

ダミアンに関しては教師時代に「何か」をして以来刑務所ぐらしなので詳細は全くの不明。

わかることと言えばその「何か」はバルバラを守るためだったことということぐらい。

うーん、何一つ見えてこないですね。

こんな情報量じゃどんな風にでも解釈できちゃいます。

例えば・・・

A:バルバラとダミアンは肉体関係があった(でもこれでは守護天使と呼ばれてる理由がよくわからない)

B:バルバラの親がウルトラDQNでダミアンがGTOライクに親を撲殺して服役(これならそれっぽい!)

C:Bと同じだけど実はダミアンは教師兼暗殺者で親を撲殺(これはちょっと格好いい)

もう好きなのを選んでくれって感じですね。

この映画は「お前ら脳ミソ使って考えろ」とか「好きなように解釈してどうぞ」って事なのかもしれませんね。

トカゲ部屋って何?

金持ちの変態SM親父によるマーターズ級の拷問部屋(多分)

ルイスのクズっぷりが清々しい

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(娘のためとは言えいくらなんでもクズ過ぎたルイス)

king of kuzu!全ての悪の元凶!Mr鬼畜!その名はルイス!

久しぶりにここまで清々しいクズをみました。

バルバラの弱みに付け込み、金を巻き上げていく様はウシジマくんでもドン引きするレベル。

終いにはダミアンに問い詰められて「恐喝はしたけど強姦はしてないよ!」とは・・・

お前は恐喝ならいいのか!っとツッコミたくなりましたね。

そりゃダミアンもブッちぎれますわ。

大体バルバラはいわゆるメンタルヘルスなわけで、メンタルヘルスは立派な病気なんですよ。

そのバルバラにつけ込むということは病人から金を巻き上げるのと同じことなんですよね。

まとめ

魔法少女を題材にしたわりには意外と中身は普通です。

普通って言うと語弊があるけど・・・普通におもしろい映画ってことですね。

演出の見せ方や伏線の張り方が絶妙で観るものに強烈な印象を残してくれます。

ただ魔法少女ならでは何かを期待していただけにちょっと拍子抜けしたのも事実。

そこら辺もっとひねってあればより楽しめたかな~って思いましたね。

 

「マミった」って言葉がめっちゃ流行りましたね。

短いのでサクって観れるのでお勧め、ちなみに劇場版がデビルマンライクだったのが最高に面白かったです。

あとホームベースと言ってはいけない。

ノリだけで楽しめる漫画。

SFが苦手な人はダメかも・・・

「人の醜悪な部分を描く」のが上手い漫画でこれ以上の漫画は見たことないかも・・

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2 Responses to “[少女の願いが招いた]マジカルガール ネタバレ 感想[災厄]”

  1. 中村 より:

    こんばんは中村です。

    私もこの間このマジカルガールを観てみましたが、個人的にはかなり楽しめました。話がというよりは所々入ってくる意味深なシーンが好きだからでしょうか。レビュー内にあるパズルのくだりなんかがそうですね。ただ結構眠い目を擦りながら観てたのであれ?こんなシーンあったっけ?みたいなのが多いのでもう一回観てみようと思います。

    スペインの映画ってあまり推されることってないですが個人的にはかなりクオリティーの高い映画を出してくる国だと認識してるので「スペインの〇〇監督が!」なんて書かれてると知りもしないのに「なに!観ないと!」ってなります。思えばルイス・ブニュエルやペドロ・アルモドバル、コレット=セラなど世界的にも有名な監督も居たりしますしね。

    後マジカルガールもそうなのですが、全体的に暗いストーリーの映画が多いなあという気がします。私はどちらかというと明るくて楽しいストーリーよりも暗くて重たい内容のものを好むので有難い話です。

    全く話が変わりますが今年も残す所後僅かになりましたね。今年は劇場公開の映画も良質な作品が沢山あり豊作な年だと思っているのですが如何でしょうか。因みに私はそろそろトップ3(話題作りとして毎年一応決めたりしてます笑)が決まってきそうですが「今年の1本はこれだ!」みたいなのはあったりしますか?でもやっぱりどれも良いものばかりで順位を決めるなんてのは難しいですよね。タランティーノはやってるみたいですが。

    それでは失礼いたします。

    • ゆでたま より:

      中村さんこんばんは!

      ワンシーンの映像が上手くていいですよね~。
      二度観ると「あ、こここうなってたのか!」という発見がありそうで面白そうですね!

      僕はスペイン映画にはてんで疎いのですが・・・独特な作風とか世界観を醸し出している映画が多いイメージはあります。
      他の監督さんは名前もわからないくらいのスペイン映画にわかですが、ジャウム・コレット=セラ作品は大好きです(^o^)

      お~、そうなんですか!
      僕はどっちもイケる口・・・というかメッチャ雑食なんでなんでもいけちゃいます(^^;)

      そうですね~、確かに今年は豊作だったと思います。
      マイナーな映画でも有名所でも面白い映画は本当にたくさんありましたね。
      僕も年の終わり頃までには観た映画や評判のいい映画をちゃんと観てランキングを作ってみようと思います。
      順位も映画レビューと一緒で自己満足の極みみたいなものですからね(^^;)
      自分なりの順位・・・で良いと思います!

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