第9地区 ネタバレ 感想
あらすじ
南アフリカ出身の新鋭ニール・ブロムカンプ監督が、05年製作の自作短編「Alive in Joburg」を長編として作り直したSFアクションドラマ。1982年、南アフリカ上空に突如UFOが飛来。政府は不気味な容姿をした異星人を難民として受け入れるが、やがて彼らの特別居住区「第9地区」はスラムと化す。2010年、難民のさらなる人口増加を懸念した超国家機関MNUは難民を「第10地区」に移動させる計画を立てる。製作は「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン。(映画.comより)
予告
95点
ありったけの美味そうな食材詰め込んだら本当に美味い食い物ができた
エイリアンもとい「エビ」達のフェイクドキュメンタリーな社会風刺から始まり、少年心をくすぐってやまない兵器や二足歩行のロボットまで登場する。
愛あり感動ありそして萌えと燃えがあるという、とにかくやりたいこと全部詰め込んでやんよという感じの映画です。
アパルトヘイトが元ネタになってるので序盤は「社会風刺系のSFものか~、社会風刺ってお気楽なSF映画見たい時には説教臭くて嫌なんだよな~」なんて思ってたけど、ヴィカス(シャールト・コプリー)のキャラがいい感じにゲスくてぐいぐい引き込まれていきましたね。
ヴィカスが人間臭くて嫌な奴だけど嫌いになれない。
ヴィカスはMNUの会長の娘と結婚しているので、MNUの大きなプロジェクトであるエビの移住計画を任されているいわゆる玉の輿エリートだ。
利己的で共感能力に欠けエビを嫌悪しており、まるで人権?を無視したよう仕事ぶりはとても好きになれない。
特にエビたちの卵を焼かせるシーンはヴィカスのゲスっぽさが良く出ている。
エビの卵を人間の子供と置き換えて考えると本当にムゴイ・・・
そんなヴィカスも物語途中で謎の液体を浴び、体がエビ化をし始めると心にも変化が現れ始める。
エビ化が始まった理由が、「あいつはエビと一発かました」なんてとんでもないデマをマスコミに流されどんどん追い込まれていくあたりは「自業自得だな( ゚∀゚)アハハ」って思えてました。
だけど軍に捕まりエビの研究施設に連れて行かれ、人体実験されてしまうあたりから段々とヴィカスがかわいそうになってくる。
何故連れてこられたかも分からないおろおろするエビをヴィカスに無理やりエナジーガンのような銃で撃たせたり(本当に心が苦しくなるシーン・・・)、「生きている内に臓器を取り出して保管しよう」などと本人の前でサラッとエゲツナイ相談をされてしまう。
人間の権利を根こそぎ剥奪されたヴィカスを見ると流石に「もう許してやろうよ(´・ω・`)」と序盤のヴィカスへの怒りは溜飲が下がりちょっぴり同情心も沸いてくる。
燃えるアクションと熱い自己犠牲
エビの研究施設から脱出したヴィカスは知能の高いエビ、クリストファー・ジョンソン(ジェイソン・コープ)と共に再度研究施設に潜入するあたりから今までの重苦しい雰囲気から一転、逃げてばかりだったヴィカスはエナジーガンで武装し戦う。
紆余曲折をへて結局はクリストファー親子の為に命を散らす覚悟で戦うヴィカスにもはや性悪だったビジネスマンの面影はない。
クリストファーに人間に戻せるまでに3年かかるなんて言われた時はプッツンきた事だろう。
「騙された!」って感じただろうし「もう助けてやらん!」とも思っただろう。
それでもクリストファーの息子に心をうたれたのか、それとも自分自身の行いを悔いたのか(ハッキリ表現しないのがポイント)命をかけて戦うのが熱すぎる。
動けなくなるほどのダメージを抱えたにも関わらず腕一本でミサイルを鷲づかみにするシーンは鳥肌ものだ。
軍との戦闘で徐々に剥がされ砕かれていく装甲、エヴァのように機体と操縦者の痛みがリンクしてるかのようなシステムは見ている側に戦闘の重さを感じさせてくれるし複数のミサイル発射シーンや豚さんを吸い上げて飛ばすサイコキネシスっぽい機能はゲームの「アーマードコア」や「バイオショック」みたいでワクワクがとまらなかった。
ゴア描写もほど良い感じで、やりすぎずでも容赦もしない感じでとっても絶妙。
ゴア描写のない撃ち合いなんてイチゴの乗ってないショートケーキみたいなものだからね。
しかも動けなくなったヴィカスを救ったのがエビたちという演出もニクくてにやりとさせてくれる。
萌えと感動もあるよ
エビの造形は元ネタを見るとしばらく飯食えないほど後悔するレベルのものだけど、映画の中ではその生態も相まってか中々グロ可愛いい。
個人的に甲殻類って苦手なんだけどエビたちは知能が低くアホの子で猫缶が好物という妙な萌えポイントがあったので嫌悪感よりも可愛らしさを感じれた。
人体実験でヴィカスに狙撃されてしまうエビは本当に胸がキュッとなる想いだった(のりたまはここで泣いた)
ヴィカスは基本クズな人間なんだけどどんな逆境におかれても奥さんの事を本気で心配しており、ヴィカスの彼女への愛は間違いなく本物だとわかる。
ラストのヴィカスが完全にエビ化してしまい、知能が低下したのかは分からないけどそれでも愛する奥さんの為に手作りの花を作ってる姿なんかは感涙ものでしょう。
まとめ
前半でのヴィカスへのヘイトをヴィカスを加害者から被害者へと変え、新たな加害者の軍へとヘイトを向けさせるのはずるいなと思いつつも上手いと感じましたね。
どう綺麗に終わらせようとヴィカスの悪事は許されないレベルのものがあるし、最後だって義侠心に目覚めてあんな行動に出たのではないのかもしれない。
ただ僕はそれでいいと思うんですよね。
結局誰だってヴィカスの立場にたてば似たような事をするだろうし、同情心からエビたちを救えば仕事にならず家庭を犠牲にする事になる。
だから人間らしく時と場合によってコロコロ心変わりしちゃうヴィカスは嫌いになれないんですよね。
最後に愛、感動、友情、萌え、燃え、というエンタメに必要なものをこれでもかと言うほど詰め込んだ上に社会風刺までしてしまうこの作品は本当に素晴らしい。
個人的にはニール・ブロカンプ監督の作品の中では一番好きな作品でした。
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